石を生き物や道具として表現した芸術

石も生きている

さらに貴石でもない、道ばたに転がっているような石も存在しています。貴石のほとんどは、美しい色がついているものですが、どこにでもあるような灰色の石には、なかなか価値を見いだす人がいないのが現実です。
そういった普段は注目されないような、ごく普通の石を特別なものとする芸術が存在しています。そのひとつが、「TURTLE-memorial volume」。こちらは、石でオブジェクトを作り、それを細かく分割して世界中へと送るというもの。
世界各地の環境を石が吸収する
これはそもそも、石が生きているということを前提に考えられたものとなっています。人間と同じように生きているわけではないのですが、水や空気を微小に吸ったり吐いたりしながら、気が遠くなるほど長いスパンで年を重ね、そして滅んでいくわけです。
石の素材によってこういった成分の吸収率には違いがあるために、吸水率が高い石を選んで世界中の野外に放置することで、さまざまな環境の色や空気の汚れを取り込み、その違いを表現しようというのがこちらのプロジェクトの基本となっています。
ちなみにこのプロジェクトは2001年に開始され、41ヶ国に送った49個の石が、2004年には47個戻ってきて、作品が完成しました。当初は灰色一色だった石が様々な色合いに染まっているのは、石が生きているということと、地球が持っている生命力が実感できるものとなっています。
石を通じて地球に電話をかける
このように地球と石を組み合わせた作品といえば、広島県にある「地球電話」が有名です。広島市現代美術館に展示されているこちらの作品は、一見すると単なる石のオブジェなのですが、その中には本物の電話が設置されているのです。

広島市現代美術館
(出典:Wikipedia)
この二つの作品を作ったのは「岡本敦生」さんという方、石や地球をモチーフとした独創的で、なおかつ石の生命力や地球の生命力を感じさせるような作品を多く発表しています。その数々の作品がWEBページで紹介されていますので、今回興味を持たれた方は、チェックしてみることをオススメします。
私たちとは全く違った時間で生きている石や地球。そんな存在を芸術を通して、様々な感覚で感じ取るというのは、なかなか興味深い経験といえるでしょう。
この記事へのコメントはありません。